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逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

逃げる太陽 ~俺は名無しの何でも屋!~

一年で一番長い日 あらすじ1~167(1)

◇あらすじ その1 俺の呟き◇

俺だよ、俺。え? オレオレ詐欺じゃないのかって? アンタ時代遅れだな。オレオレ詐欺はもう時代遅れだよ。今は振り込め詐欺。

じゃあ俺って誰なんだよって? あー、俺はその、なんだ。何でも屋をやってる俺だ。「オレはムラタだ!」って、村田秀雄じゃねーよ。しかも古っ。



あ? 紛らわしい? 苦情なら、prisonerNo.6に言ってくれよ。あいつ、何でか知らないけど俺に名前をつけてくれないんだよ。あいつ今頃になってあらすじに悩んでるみたいだな。いい気味だ。行き当たりばったりに話書いてるからだよ。

さてと。

それなりに平和に生きてた俺が混乱の中に叩き込まれたのは、二〇〇六年六月二十一日のことだ。目が覚めたら知らない部屋で、おまけに隣に知らない女の死体が転がってたんだぜ?

もちろん俺はそこから逃げたさ。女は血まみれだったけど、俺の手はきれいなもんだったし。え? 眠ってる間に殺したんじゃないのかって? あのな、服にもどこにも血はついてなかったんだよ、そりゃないだろう。『カリガリ博士』の眠り男じゃあるまいし。



そっから色々あってなぁ・・・
溜息が出てくるよ。行方不明人探しに、麻薬疑惑。どうやら俺の死んだ弟もそれに関係あったみたいで・・・

あー、話す前から疲れたよ。飲んでなきゃやってらんねーや。
あの悪魔のような双子の話もしなきゃなんないし。

続きは明日な。



◇あらすじ その2 俺の呟き◇

あのさ、俺ってバツイチの男なわけよ。しかも子持ち。親権は元妻の方にあるけどな。



俺、実はリストラに遭ったんだよね。けど、それをなかなか妻にはいえなかったわけ。毎朝会社に行くのと同じ時間に家を出て、ハローワークに行って・・・ 余裕なかったな。妻と子を養わないといけないんだから、なんとか早く次の仕事を探さなくちゃと必死でさ。

結局、離婚したんだけどね。そう、形から言えばリストラ離婚。だけど、俺の妻だった女はそんなにドライじゃない。彼女は、見てられなかったんだと思うよ、俺が頑張りすぎるのを。そのままだと、俺が壊れてしまうと思ったのかもしれない。

だから、娘を連れて実家に帰った。娘のののかに会わせてもらうには、養育費を払わないといけないんだが、これも多分、元妻の思いやりなんだよ。俺、リストラ以降、抜け殻みたいだったからな。妻と子のためにと必死だったけど、実は空回りしてて。意識してなかったけど、その時の俺には重荷だったみたいなんだ、妻子の存在が。

だけど、それが俺の支えでもあった。これがアンビバレンツってやつか。



彼女は離婚という形で俺を解放してくれたけど、そのまま放っておいたら俺がダメになってしまうって思ったんだろうな。だから俺に「養育費」という義務を与えた。



分かってるさ。彼女の思いやりは。
それから、俺は何でも屋を始めた。義務を果たすために。元妻の気持ちと娘を可愛いと思う気持ちを支えにして、何とか自分の足元を固めたわけよ。どぶ浚いやペット探し、庭の草刈り、時には浮気調査なんてのもやりながら、俺は毎日必死で生きている。

目的のある人生ってのは、いいもんだ。

そうなんだ、俺はいつでも必死なんだよ。だから、女の死体の隣で目が覚めたってくらいで、せっかくの仕事の依頼を断ることなんて出来なかったんだ。

まさか、そのせいであんな訳の分からない事件に巻き込まれる羽目になるとは・・・

けどな、俺が意識する前から俺は既に巻き込まれてたらしいんだ。
それが分かったのはもう少し後のこと。

仕組んだのは、芙蓉と葵の一卵性双生児。
あいつら、マジ何とかして欲しい。

俺に双子の片割れ、葵の行方を捜してほしいという依頼をしてきた彼らの父親、高山・ザ・笑い仮面は、もっと何とかして欲しい。

不気味なんだよ、高山という男は。



◇あらすじ その3 俺の呟き◇

高山ってさ、本当に笑い仮面なんだよ。息子が行方不明になろうが、なんだろうが、心配だといいながら常に顔が笑ってるんだよ。

ああいうのって、無表情とイコールだと思うんだけど、どうよ?



高山は、俺にとっては悪魔のような双子、芙蓉と葵の父親で、某有名な金融会社の代表取締役だ。今回、彼は双子の弟の方、葵について捜索依頼をしてきたんだが、話を聞きに行って驚いたさ。何しろ、その五年前にも葵の兄、芙蓉が行方不明になってるっていうんだから。

何よ、この時間差行方不明。時間差っていうより、年間差? 怪しい臭いがプンプンしてくるぜ。



けどさ、せっかくの仕事依頼だ。犬猫探しや草むしりよりだんぜんお金になるし。だから俺は頑張って高山葵の行方を捜し始めたんだ。

でも、本当は葵は行方不明でも何でもなかった。

どうしてそれが分かるかって? 当の葵に聞いたんだよ。目が覚めたら隣に女の死体があって、死ぬほど驚いたあの夏至の日の前夜、俺と高山と葵の三人であちこち飲み歩いたんだってさ。俺、ぜんっぜん覚えてない。高山が俺に捜索依頼をしてきたのは、夏至の翌日だ。葵の言うとおりだとしたら、時間的におかしいだろ?



高山は、葵はひと月前から行方が分からなくなったと言ったんだ。なのに、俺と葵と高山の三人で飲み歩いたのは、わずか二日前。

それで行方知れずって言われてもなぁ。

俺には全然わけが分からなかった。しょうがないさ、俺、ただの何でも屋なんだから。

高山には何らかの思惑があったらしい。葵にも。こいつら親子には、実は深い確執があったんだ。

 牡丹と薔薇

この夜、俺が彼らに会ったのは全くの偶然だ。だが、それがきっかけとなって俺はおかしなことに巻き込まれ、弟の死の真相らしきことまで知ることにもなった。

人生、何があるか分からないな。

俺の弟は、警察のキャリア組だった。だけど数年前、何者かに殺されたんだ。犯人は未だ捕まっていない。・・・これも偶然だが、俺と弟も実は一卵性の双子だったんだ。高山の息子たちと同じように。

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零時三十分前とか二十分前になってから書き始めるのはもうよそう。prisonerNo.6は反省する。

だが、明日は明日の風が吹くのであった。あ、もう今日か。



顔面薬まみれの夜。これでよくなってくれたなら、その分の医者代で○○屋までシャンプーとリンスを買いに行こう。そう決心するprisonerNo.6であった。

うむむ、憂鬱・・・

◇あらすじ その4 俺の呟き◇

俺の弟は、あるドラッグのルートを追っていたらしい。

「あなたの弟さんは、新種のドラッグの流出元を追っていた。<ヘカテ>と名づけられた、紫色した残酷な麻薬を」



双子の片割れ、芙蓉はそう言った。警察内部に<ヘカテ>にかかわる者がいて、弟はそのせいで殺されたのではないか、とも。つまり、その何者かにとって弟が目障りになったということだ。

<ヘカテ>というドラッグの流通経路はまだ分からない。しかし、実の父である高山もそれに関係しているに違いない、と芙蓉は言うのだ。

今から五年前、芙蓉は高山の家から姿を消した。謎の失踪とされたが、実際は父親に追い出されたというのが真相らしい。追い出すだけでは飽き足らなかった高山は、芙蓉の戸籍を抹消し、社会的に死人とした。



なぜ芙蓉はそこまで父親に疎まれることになったのか。それは、彼の性癖に原因があった。

・・・性癖、といっても、単に彼が衣装倒錯者である、ということだけだ。
俺もちょっとは驚いたさ、話を聞いた時は。俺の前に現れた芙蓉は、きれいな女にしか見えなかったし。でも、心は男のまま、らしい。その辺り、俺にはよく理解できない。

それにしても、だ。たった十六の子供を放り出して、あまつさえ、戸籍を抹消するほどのことか? <笑い仮面>高山には、父親の心が無いと俺は断言するね。一児の父親の俺が言うんだ。間違いない。

子供ってのはなぁ、可愛くなくても可愛いもんなんだよ。言うことを聞かなくても、悪戯をしても、生意気な口を利いても、手間がかかっても、それでも親にとって子供ってのは可愛いもんなんだ。エロ可愛い、なんてコトバがあるけど、それで言えば、憎たらし可愛いんだ。



まだ十六の未成年の身で放り出された芙蓉は、同じ衣装倒錯者の日向夏子という人に拾われ、幸福な数年を過ごしたようだ。彼女が亡くなるまで。

なんたって、芙蓉は二十一歳にして一児の父親だ。しかも俺の娘と同い年の。日向夏樹くん五歳。素直な良い子だよ。

二十一で五歳の子持ちぃ~~??? ってか?
ヤツも男だってことだよ。女の格好をしようが男の格好をしようが、中身は変わらないってこと。

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ちょ~っとブルーな気分のprisonerNo.6。
ま、そんな日もあるさ。

右手の腱鞘炎が少し自己主張を始めてくれたので、ブルーの二乗。
ああ、ラプソディ・イン・ブルー・・・



◇あらすじ その5 俺の呟き◇

その芙蓉と葵は、五年ぶりに再会したらしい。それもごく最近のこと。

ちょうど少年から青年に変わる、変化の時期に離れていたにもかかわらず、葵はすぐにそれが行方不明の自分の兄だと気づいたという。どんな群集の中にいても、視線が吸い寄せられる。そんな感じらしい。・・・ま、全く同じ顔だしな。

 壊れかけのRadio

芙蓉から失踪の真相を聞いた葵は、父高山と決別する意思を固めたらしい。元々、高山は息子たちに冷たかった。衣食住には不自由させなかったが、愛情を与えなかったのだ。

父親と息子のコミュニケーションの定番(?)、キャッチボールですら、二人でしかしたことがないという。



なんというもったいないことを! ののかが男の子だったら、俺は絶対キャッチボールに誘うぞ。今でもののかがやりたいというなら、いつでも相手をする用意がある!

子供はなぁ、子供のうちしか親にかまってくれないんだよ。

だが、高山は自分の息子たちを部品扱いした。双子で二人いるんだから、片方が欠陥品なら捨てればいい。そんな考え方をする人間だったんだ。
欠陥品はないだろう、おい。芙蓉は・・・あー、ちょっと変わった趣味を持ってるだけじゃないか。弟の葵ですら知らなかったくらいだから、TPOは完璧に弁えていたはずだ。

ちょっとその辺をバイクで走り回るとか、ゲーセンに入り浸るとか、駅前広場に座り込んでダベるとか、そういうのと大差ない、と思うぞ。──多分。



しかし、捨てられた芙蓉もタダモノじゃなかった。家を追い出される前に、高山の会社のダークサイドに関する資料を全てコピーし、持ち出したのだ。高山もつい最近までそのことに気づかなかったという。

芙蓉にしてみれば、何かあったときの保険のつもりだったそうだ。残していく弟の葵のことが心配だったし、あの父のこと、ひとたびその存在が邪魔だと認識したなら、家から放り出した息子にすら何をするか分からない、と。だから、戸籍を抹消されていることを知った時も「ふーん」程度だったそうだ。

今回芙蓉が父親と対決することになったのは、彼を保護し、愛し、子供を遺してくれた女性、夏子さんの店の入っているビルを、高山の会社が汚い手で取り上げようとしたのが原因らしい。

高山自身は、そのビルの一店舗と追い出した息子の一人が関係しているなど、全く知らなかったらしいが。・・・捨てた息子には何の関心もなかったようだ。

芙蓉は高山の会社にとって都合の悪い資料を武器に、今は戸籍上何の関係もない父に戦いを挑んだ。高山のもう一人の息子は兄の側についた。そうして高山はその資料を取り戻そうと、二人と激しく対立していた。



そんな時、俺は彼らと出会った、らしい。俺は覚えてないけど。
酔ってたんだよ、悪いか!



だからって、死体の真似をして俺をびびらすことはなかっただろう、芙蓉・・・ どこの三流ドラマの演出だよ。

一応、理由はあったらしいんだけどな。

その理由というのが、例の<ヘカテ>。俺の弟の死の原因になったドラッグだ。俺を巻き込んで死体発見騒ぎを起こし、<ヘカテ>と何かの取り引きの邪魔をするつもりだったらしいんだ。

こんなことがなければ、俺は弟の死の真相を知ることはなかった。「ヤクザの抗争のとばっちりではないか」という警察の言葉を信じてたからな、俺。

そういう意味では、あいつら双子に感謝しないでもないかもしれない、ような気がする。

◇あらすじ その6 俺の呟き◇

そう、弟は殺された。何者かによって。

あの日。

俺が駆けつけた時、弟はすでに身を拭われて霊安室に横たわっていた。血の気の失せた青白い顔。鏡を見るように同じ顔だったのに、その時、俺たちは決定的に違うものになったと感じた。

俺たちは隔てられたのだ。生と死に。



俺を案内してくれた刑事は、複雑そうな顔をしていた。そっくりな男が二人。一人は死人、もう一人が死んだ方を見下ろしている。線香の煙が漂う中、白い菊の花が幽かに香っていた。

「お兄さんなんですね、彼の」
ぽつり、と刑事が言った。
「こんなにそっくりだとは知りませんでした」

「一卵性だから・・・」
俺はそんなふうに答えたと思う。ただぼんやりと弟の顔を見ていた。

「発見された時はすでに手遅れで・・・」
刑事は俺の目を見ずに言う。
「心臓に一撃だそうです。失血によるショック死に近いということで、その・・・」

「苦しまずには済んだんですね」
弟は眠っているようだった。頬を触ってみる。冷たかった。それが、とても悔しかったのを覚えている。



警察官は危険と隣り合わせの仕事。

そんなのは、遠い世界の話だと思っていた。この職業、身の上に何が起こるか分からない。確かに弟はそう言っていた。けれど。

滅多に酔わない弟が、珍しく酔いつぶれたことがある。気に掛けていた少年を死なせてしまったと、自分を責め、酷く嘆いていた。その少年の死因が、ドラッグ──<ヘカテ>だったらしい。

弟は俺には仕事の話を一切しなかったから、俺は知らなかった。弟がほとんど単独行動でこのドラッグを追いかけていたことを。そうして、夜の街に呑まれそうになっている少年少女が、<ヘカテ>や<ヘカテ>以外のドラッグに溺れるのを、何とか食い止めようとしていたことを。



弟の捜査は、かなり核心に迫っていたのではないか。芙蓉はそう言う。

芙蓉は高山と対決するために、改めてそのダークサイドを探ってみたらしい。芙蓉が夏子さんから託された店は特殊で・・・つまり、女装バーなわけだが、色々と情報提供をしてくれる上客もいるということだ。本人もこつこつと調べてまわったらしい。

そこから浮かび上がってきたのが高山と<ヘカテ>の関係。ドラッグ<ヘカテ>を扱う組織に、高山からの裏資金が流れているというのだ。

俺の弟はその組織についてかなり詳しく調べ上げ、おそらくは何らかの証拠を掴んだ。そのため、口封じに殺された可能性があると芙蓉は言う。・・・弟の所属していた警察組織の中にも、内通者がいるらしい。




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